ラストダンスは私に

母の介護日記です

久しぶりの外出

先日、久し振りに平日の昼間に電車に乗って外出をした。電車は少し混んでいたけど、私は座ることができた。しばらくすると、私の近くに立っていた40〜50代の女の人が、突然床にしゃがみこんだかと思うと、おもむろにメイクを始めた。荷物がパンパンに詰まった大きなバッグを3つ抱えて、必要最低限の身支度だけしてとりあえず家を出てきました、といった風だった。まわりの人もちょっとギョッとしていた。

私も電車の中でメイクするのはどうかなと思うし、もっと若い頃に「きれい目OL」をやっていた時期は、「そういうの信じられない」と思っていたし、電車の中でメイクする人を視界に入れたくないから、車両を移動したこともあった。

けど、この間は「ああ、わかるわ、忙しいんだよね〜」って共感した。しなくちゃいけないことが山ほどあって、きちんとしたくても、その余裕がないんだよね。母の介護生活を始めてから、私も食べ終わった食器を洗わずに一晩放置したり、お風呂に入らず寝てしまったり、メールを返信もせず何日も放っておいてしまったりするから。電車の中でメイクをしなければいけない人の気持ちも、今はわかる。

だから、自分が降りる時に、その人に「どうぞ」と言って席を譲った。座ってゆっくりメイクしてください、というつもりで。昔の私だったら、絶対にしなかった。

私も随分と寛容になったものだと思う。そして、人に寛容である方が、厳しい自分でいるよりも、ずっと生きやすい。