ラストダンスは私に

母の介護日記です

誤嚥騒動

おいしそうに黒蜜きなこプリンを食べた翌日の金曜日。母の様子を見ると、苦しそうにして眉間にしわをよせていた。ドクターに電話をして、痛み止めの錠剤を飲ませた。薬が効いたようで、苦しそうな様子はなくなった。そして、その日はそのままずっと眠り続けた。半日以上眠り続けた。その間、私は水分をとらせなければと思って、数時間おきに経口補水液のOSー1ゼリーを飲ませてみたけど、もうろうとしていてうまく飲み込むことができない。寝ている時に口のなかに残っているといけないので、スプーンで口の中のゼリーをかきだした。

 

その翌日の土曜日、朝起きて母の様子を見ると、ゼイゼイと苦しそうに息をしていて、喉のあたりではゴロゴロと痰が絡まる音をさせていた。その日は朝8時40分に訪問看護の予定だったけど、それまで待っているのが心配だったので、まずはドクターに電話で相談して、看護師さんに早めにきてもらうように依頼した。看護師さんは母の背中をたたいたりさすったりして、喉につかえている痰をはきださせようとしてくれたけど、肺活量が少なくて吐き出すことができない。

そのうちにドクターも往診に来てくれた。この日は玄関のチャイムを鳴らすや、私がドアを開けに行くのも待たず入ってきた。いつもの穏やかな様子と違って、すごい緊迫感だった。看護師さんが喉の奥をガーゼで拭うと、なにかがたっぷりぬぐい取れた。「心当たりありますか?」と看護師さんが見せてくれたもの、それはきな粉だった。木曜日に食べた、プリンのトッピングに黒蜜と一緒にかけたきなこが、丸一日以上も喉にへばりついていたようだった。さらに吸引器で詰まっているものを丁寧に取り除いてもらったら、喉のゴロゴロ音はおさまった。

 

思えば、金曜日に苦しそうにしていたのは、喉にへばりついていたきなこで呼吸が苦しかったのかもしれない。口腔ケアはしっかししていたつもりだけど、喉の奥までは掃除が行き届いていなかった。前日にほとんど水分をとれなかったのも、喉の詰まりを悪化させてしまったのかもしれない。薬で半日以上も眠り続けたのは、ふだん使っているテープ式の痛み止めに加えて、錠剤を重複して使ったので効きすぎてしまったためらしい。事前にドクターに相談したとはいえ、安易に痛み止めの薬を飲ませる前に、もう少し慎重に見極めておけばよかった。

 

以下がドクターからの注意点。

「液体なら液体だけ、個体なら個体だけ。プリンときなこのように、性質の異なるものを一緒に食べさせないようにしてください。それから、意識がはっきりしていないときには、食べ物や飲み物を口に入れないように。目が覚めたばかりのときや薬を飲んだときは、特に注意してください」

はい・・・心得ました。点滴をやめてからというもの、少しでも口から水分を取ってもらおうと躍起になっていました。与えるのは本人が欲しがるだけと思いながらも、やっぱり私の不安から、私が安心する量を飲ませていたところがあったことに気がつきました。

 

その日は、念のために午後にもう一度看護師さんに様子を見に来てもらった。その時は喉のゴロゴロ音はしなかったけど、夜遅くになってまた音がし始めたので、訪問看護ステーションに電話して10時頃にまた看護師さんに吸引に来てもらった。吸引が終わったのは夜11時。頑張ってくれたお礼に冷たいお茶を出したら、看護師さんは気持ちよくグラスを一気に飲み干した。若いって素晴らしい。早朝から夜遅い時間まで、本当にありがとう。

今回は一過性の誤嚥で、幸いにして肺炎にはいたらなかったのは幸いだった。

この事件をきっかけに、母には酸素チューブが取り付けられた。