ラストダンスは私に

母の介護日記です

なだらかな曲線

雨降りの土曜日。

母は眠っている時間が圧倒的に増えてきた。少し前までは、何時間かおきに目を覚まして水分をとっていたんだけど。何日か前から、ほんとうに目を覚ます回数が減ってしまった。

今朝は8;40に看護師さんが来て、ていねいに痰を吸引してくれた。看護師さんがやると、鼻に管を入れられても、あまり苦痛を感じないようだった。さすがはプロフェッショナル。看護師さんが吸引するのを観察していたら、管をあまり押し付けず、痰がヒットしたら吸い上がってくるのをゆっくり待っていた。なるほど、掃除機と同じで、ギューギュー押し付けたり、せかせかと動かすのは効果がないのだね。

看護師さんが帰った後、母は11時頃に一度目を覚まして、ストローを吸うように口をすぼめて見せた。これが最近の「水が飲みたい」サイン。OS–1ゼリーを半分ぐらい飲んだあと、今日はそのままずっと眠り続けている。痰もきれいに取ってもらったので、息苦しい様子もなく、穏やかな寝息を立てている。夕方5時頃に爪を切ってあげたのだけど、私が手を触ったり色々動かしたりしても、ちっとも目を覚まさなかった。そのくらい深い眠りが続いている。

ふと、気づく。今週の初めに、ドクターが「遠からず意識がなくなるでしょう」と言ったこと。もしかしたら、それがもう始まっているのかもしれない。昏睡状態はある日突然訪れるものと思って身構えていたけど、そうか、こんなふうに静かに、さりげなく、日常の続きとしてやってくるのか。だとしたら、死も同じように、眠りの延長線上に、静かに、さりげなく、なだらかな曲先を描いた先に、ふっと途切れるようにしてあらわれるのかもしれないな。